セーターの穴あき

白、緑、黒の3色先染め糸使いの柄編みダブルニットセーターです。クリーニングに出したところ、前後身頃、裾裏の柄編み部分に10ヶ所の穴あきがみつかり 、そのうち2ヶ所は表にまで通っていました。製品はまだ数回しか着用されていません。また、受付時、穴があったかどうかは不明でした。さて、なにが原因でしょう?
イメージ イメージ 白糸が消失しているため、表側の黒糸が出てしまっています
イメージ 白糸先端が、鋭利な切り口で一部欠損しています
組成表示 毛100%
絵表示 イメージ
発生原因 苦情の穴あきとなった部分をよく見ると、特に白糸が消失していることに気づきます。その部分を顕微鏡で拡大してみましょう。白っぽい毛繊維を 中心にして、先端が丸みを帯びたり、斜め方向に切れたりしています。この切れ方は、虫食いにみられる特徴です。周辺に変退色、溶解の痕跡は見当たらず、周辺生地の脆化、硬化、毛羽立ちはありませんでした。その他、虫食いの根拠として、以下の点が挙げられるでしょう。
1. 素材は虫がつきやすい毛100%であり、全体がダブルニットのしっかりした組織である
2. 白糸を中心に糸切れとなっている
3. 穴が裏面に集中している
4. 表側から穴は見つけにくい
5. クリーニング依頼時に、穴があいていたかどうかわからなかった
メーカーの保管時に、虫が食うことも
こうした状況から判断すると、原因は虫食いと思われます。虫が裾部分から侵入し、加工度合いの低い白糸を中心に蚕食したものでしょう。家庭での保管状態がわからないとはいえ、着用期間が短い点を考ると、この虫がいつ侵入したかが問題になってきます。 虫食いの恐れは家庭だけとは限りません。メーカーでは流通上、売り出す時期の約半年前に、製品が作られ、保管されています。そうなると、保管状態によってはメーカーでの虫食いも考えられるわけです。この虫食いは、メーカーの出荷または展示までの保管中にできたものと思われます。製品購入時は、裾近くの裏面であったため目立たなかった穴が、着用中の生地の伸縮で周辺の糸切れが生じ 、さらにクリーニングの機械力で広がってしまったのでしょう。 クリーニング店内での虫食いの疑問も生じるかと思いますが、ドライ溶剤は有毒性で虫の生存を許しません。また、処理工程の機械力では、羊毛繊維に物埋的影響は与えないとの文献もあり、穴あきの直接原因はないでしょう。
(最後に後日談として、メーカーでも保管中の虫食いによる穴あきと判断されたことを添えておきます。)

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